觀龍巡錫日記(最 上

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 昭和62年、最上札所開設五百五拾五年を記念する御開帳の折、巡礼の所作も知らず一番札所鈴立山若松寺で「臥龍軒鈴慕 竹調」を献曲した、その折り居合わせた巡礼者から「観音堂で聞く尺八も良いもんだ」と云われたのがきっかけとなり、本曲献曲の巡礼をした。
 それがきっかけで、観音様に本曲を聴いて頂く喜びに目覚めて「虚無僧」となった。
 先達に導かれた巡礼の経験が無いので所作は我流である、四国遍路で覚えた所作(合掌禮拝・懺悔文・三帰・三竟・十善戒・発菩提真言・三昧耶戒真言・開経偈・般若心経か観音経を読経)の間に息を整えて、本曲を献曲する、その後 十三佛真言・光明真言・ご本尊真言・舎利禮文と一通り行うと、本曲にもよるが大体25分〜35分位のお勤め時間となる。

 今年(子年)は最上三十三観音御開帳と聞き、私の普化尺八の原点である最上三十三観音の巡錫を思い立った。
 6月10日に発願して天童駅から歩き出し、主として仙台から日帰りで通って9月18日に真室川駅まで到着して結願となった、実巡礼日数は10日間の歩き遍路であった。
  (連合御開帳期間は5月1日より10月31日まで)
2008年6月10日(月)
仙台〜天童駅〜1 若松〜2 山寺〜番外 山寺奥の院〜山寺駅〜仙台





 寶
 珠
 山
 立
 石
 寺
 千
 手
 院
 朝 仙山線国見駅まで送ってもらい
 鉄路にて奥羽本線天童駅まで行き、仙山線山寺駅より戻る

 巡礼の白装束で国見駅ホームに立つ、向かい上り線ホームに居る多数の出勤・通学客から奇異の目で見られているようだ。
 天童駅から東方の若松寺を目指して歩く、あまり道を間違わず鳥居に着く、参道入り口で地蔵さんに水を掛けて
 一口おすそ分けの水を頂いてから静寂の中、青葉まぶしい山道を歩く 時折車道を登る車の音が聞こえる。
 参道を上り山門を潜ると流石御開帳年の1番寺 車参拝の巡礼者が多数いる しばらく参拝の順を待ってから献曲  「本手調子」「三谷」 後 参拝日付を入れて頂く為に別の御朱印帖を購入
 若松から山寺はアスファルト道をひたすら歩く、巡礼は珍しいようで途中老人から話しかけられ又近道を教えて頂く
 松尾芭蕉が山寺参拝の折に「まゆはきを おもかげにして べにのはな」の歌を詠んだという場所で暫時休憩、後は畑の中の道を行く。
 山寺千手院で「本手調子」「手向け」を献曲して、40分ほど歩いて山寺奥の院へ(お参りに拝観料を取られるのに疑問を抱きながら)此処では虚鐸のみ「京調子」にて息を整えて「阿字観」献曲

2008年6月12日(水)
仙台〜山寺駅〜2 山寺〜3 千手堂〜4 圓應寺〜5 唐松〜山交BT〜仙台













 




 




 朝 仙山線国見駅まで送ってもらい
 鉄路にて仙山線山寺駅まで行き、山形よりバスにて仙台へ戻る 

 一昨日の打止札所、山寺千手院にて「手向け」を献曲後、山形に勤務してた時に子供達と山寺から寒河江までサイクリングをした想い出のある立谷川河川敷サイクリングロードを漆山まで歩く、木陰が無くとても暑い
 千手堂では、歩き巡礼という事で特別に観音堂内陣まで案内され「本手調子」「虚空曲」献曲
 圓應寺では、「手向け」献曲
 唐松では、「京調子」「阿字観」献曲

 唐松より山交バスターミナルまで車ご接待を頂く,疲れた体にはとてもありがたかった。合掌

2008年6月24日(火)
仙台〜山寺風雅の里〜7 岩波〜9 松尾山〜10 上の山〜11 高松〜高松BT〜仙台
 新
 福
 山
 石
 行
 寺
 金
 峰
 山
 松
 尾
 院
 水
 岸
 山
 観
 音
 寺
 高





 山寺経由で7番岩波まで車で行く
 高松バス停留所まで歩き車にて仙台へ戻る。
 車で山寺「風雅の里」で開かれた仏画展に行く、仏画の開眼供養に参列する、山寺貫主の読経に合わせ龍童導師が虚鐸献奏をする、その音色に少しでも近づきたいと一層の修業を覚悟する。
 その後山形まで車で送ってもらい、昼から7番岩波より11番高松までを歩く。
 岩波では丁度昼時間のため他に巡礼は居ない、観音様には申し訳ないがまだ自分のものになっていない「鈴法」「山谷」「息観」を練習を兼ねて献曲、手を思い出し・思い出しの為に途中で幾度か止まる30分ほど献曲、他の巡礼の声が聞こえたので退出。
 岩波から飯田に向かうのには桜田の新興住宅地を通る、古い川沿いの道は歩く人が無い為か片栗の蔓が一杯に広がっていて薮漕ぎするようだ、下半身を草の緑汁で染めて飯田街道へと出る。
 松尾山では、「三谷」献曲
 上の山では、観光客が多くいたので手短に「調子」献曲、観音様ごめんなさい。
 上山から高松に向かってはひたすら地図を頼りに直線となるよう裏道・あぜ道を歩く
 高松では、「本手調子」「虚空」献曲
2008年6月27日(金)
仙台〜山交BT〜8 六椹〜7 岩波〜6 平清水〜5 唐松〜山交BT〜仙台
 六
 椹
 山
 宗
 福
 院
 新
 福
 山
 石
 行
 寺
 清
 水
 山
 耕
 龍
 寺
 唐




 広瀬通でバスに乗り山交BTまで
 
 山交BTよりバスにて仙台へ戻る
 前2回で抜いてしまった山形市内の5番から8番を逆打ちで廻る為、広瀬通まで家人に送って戴きバスの乗る。
 山交BTから六椹までの道は新しく開けていて前回歩いた道とは違い迷ってしまったが 街中とてそんなに遠回りせずに辿り着く、「三谷」献曲
 岩波では、「大和鉢返し調」献曲
 平清水では、「本手調子」「三谷」献曲
 唐松では、「虚空曲」「三谷」献曲
 唐松から小白川までは馬見ヶ崎川河川敷を歩いた、さすが芋煮会の本場 公園として本当に良く整備されている歩いて気持ちの良い道だった 

 7月・8月の暑い時期を避けて遍路再開は9月に入ってからとした

 7月はヨーロッパアルプスのスイス・フランス各地で献曲をした、特にアイガーバント駅ではヨーロッパで亡くなった岳友の為にアイガー北壁を見下ろしながら「回向」献曲、音を抑えたつもりだったがトンネルの中は思いの他音が響き渡ったようで外人観光客が大分よってきた、また教会での献曲(「手向け」「息観」が多かった)の時は、いずれの教会も音響効果の良さに驚いた。

 8月は恒例の上高地、11日滞在した間は毎朝穂高に向かい「手向け」「回向」を献曲した。
 また、縦走や登山も数度行ったがピークでは献曲出来ず、宿泊地で朝と途中に有る神社仏閣で献曲した。
2008年9月2日(火)
仙台〜高松BT〜11 高松〜12 長谷堂〜13 三河村〜14 岡村〜羽前長崎駅〜仙台
 高




 長
 谷
 山
 長
 光
 院
 観
 音
 山
 常
 福
 寺
 金




 広瀬通でバスに乗り山交BTまで
 山交BTにて乗り換え高松BTへ

 羽前長崎駅よりJR左沢線・仙山線と乗換えて北仙台へ
 北仙台で地下鉄に乗換え八乙女まで
 あとは歩いて自宅に21時着
 終点の高松BT下車したが、手前の市役所前が下車した方が高松観音には近かった
 前回あるいた田のあぜ道を左手に見ながら、往来する車の排気ガスに辟易しながら国道を歩く
 高松では、前回と変え「大和調子」「阿字観」献曲、春よりも大分巡礼者が増えたようで参道では3組程とすれ違う
 長谷堂へは上山の街並みを見下ろし蔵王を対岸にみるブドウ畑の連なる小高い道を辿る
 長谷堂では、「手向け」「三谷」献曲、此処でバスと電車を使って巡礼する方に会う、聞けば今朝上山を出たそうで13番・14番でも参道で出会い前後しての参拝となる、最寄駅でバスや電車時刻を待って次の札所最寄駅から歩くのと真っ直ぐ歩くのではそんなに時間が異ならないようだ。
 三河村では、「本手調子」「山谷」献曲、歩く距離が長くなるとお参りする時間も長くなるような気がする
 岡村では、「手向け」「息観」献曲
 岡村から羽前長崎までの道は、薄暗くなってきた為か実際よりも遠く感じた事と、駅改札口まで着いた時に丁度列車が出て吹きさらしのホームで1時間以上待った事が重なり、帰宅した時に今まででは一番疲れた顔をしていたようだ。
 
2008年9月4日(木)
仙台〜西川B停〜西川町〜17 長登〜15 落裳〜16 長岡〜18 岩木〜東根駅〜仙台
 寒




 京
 集
 山
 観
 音
 寺
 長
 岡
 山
 長
 念
 寺
 恵




 仙台より高速バスに乗り西川BTまで

 東根駅より車ご接待を受け山交BTまで
 山交BTよりバスにて仙台へ戻る
 西川BTでの乗降客は私一人、階段を下り高速道路エリヤから外に出た所で身嗜みを整える。
 長登までは大型車両の頻繁に行交う国道112号を2.4Kmほど行く、歩道が無い所では車に巻き込まれないように特に慎重に歩く、日本の道路は安全に人が歩ける道はなくなってしまい、通学児童に黄色い目印を付けさせたりヘ、ルメットを被らせる、すっかりおかしな国になってしまったとつくづく感じる。
 そんなこともあり、長登に上がるわき道に入った時は本当にホットして観音さまの御加護を感じた
 長登では、「本手調子」「虚空」献曲
 長登から2Kmほど行き寒河江川にかかる橋を渡り国道を離れ通行量の少ない脇道を選びながら寒河江へと歩く
 落裳では、団体客が相前後していた「手向け」献曲
 長岡に向かう途中、駅前の御神輿の展示場で寒河江八幡宮祭りの賑わいを感じながら「本手調子」献曲
 長岡では、「大和調子」「三谷」献曲
 谷地では林檎園の夫婦から林檎と飴のご接待を戴く、先ほど車で追い越し私が歩いてくるのが判り、わざわざ準備して待っていて巡礼鈴の音が聞こえたので門口まで出てくれたと言う、光明真言を唱え納札を貰って頂く、五つ戴いた林檎は岩木観音に四つお供えし一つはお参り終わってから戴いた、蜜の詰まった美味しい林檎でした
 また、紅花資料館付近で2日に相前後した巡礼の方から岩木への道を聞かれる、役場で聞いた道が此処で判らなくなったと言う、東京から来て今回は札所の写真を撮りに来た事など聞きながら岩木まで同行する
 岩木では、「本手調子」「山谷」献曲
 岩木からは村山盆地が見下ろせる、最上川に掛かる谷地橋方向に見当を付け田の畦道を縫い縫い下ってゆく
 そんなに大回りせずに谷内橋に掛かると、後は歩道の無い交通量の多い車道歩きとなる
 東根駅に到着し本日は終了とした
 
2008年9月15日(月)
仙台〜東根駅〜19 黒鳥〜20 小松沢〜21 五十沢〜22 延沢〜23 六沢〜24 上の畑〜尾花沢「Hおもたか」
 東




 青
 蓮
 山
 清
 浄
 院
 如
 金
 山
 喜
 覚
 寺
 祥




 光




 上




 村山・最上地区は仙台から日帰りするとほとんど歩く時間が取れなくなる為に、宿に泊り四日間連続で歩く事にした
 札所に問合せると最上三十三観音には通夜堂や遍路宿は無いと云う、三晩なので宿に泊る事とした
 広瀬通でバスに乗り山交BTへ、そこで乗り換えて東根駅へ
 黒鳥では、「本手調子」「手向け」献曲、朝早いのに次々と参拝客が来る、きっと東根温泉に泊った団体だろう、参拝の時は何時も正面を空けて脇で献曲しているが、大人数が立ったままわいわいやっているので落ち着かない、早々に堂を出て朱印所にて印を戴き退散とした
 小松沢では、「大和調子」「阿字観」献曲
 土生田より街道を離れ湯船沢温泉前を通る峠道を行く、最上藩政時代からの面影の残る古い道、ススキを掻き分け掻き分け降りて行くと藁葺屋根が連なる五十沢集落へと着く
 五十沢では、「虚空」献曲、五十沢観音朱印所の喜覚寺で延沢へ抜ける近道を教えて頂く
 六沢では、「大和調子」「回向」献曲、4時を回ったので上の畑を明日にしようかと思ったが24番は寺の境内にあり少し遅くなっても参拝させてくれるとの話を聞き歩き出す
 上の畑に着くと六時を少し回っていた、観音堂の扉は閉まっていた、読経後献曲をはじめると住職が庫裏から出てきて扉を開け灯明を点けてくれた、本当にありがたいことである、甘えて堂に上がり香偈・懺悔偈とお参りを最初からやり直す、「本手調子」「手向け」献曲
 宿は、25番の近く尾花沢市内にある「おもだか」に泊る、夕食は準備出来ないとのことで街にでるが蕎麦屋も丁度閉まる時間、コンビニでおにぎりとパンを購入して夕食とする
2008年9月16日(火)
尾花沢〜30 丹生村〜28 塩の沢〜29 大石田〜27 深堀〜26 川前〜25 尾花沢〜尾花沢「Hおもたか」
 鷹




 塩
 沢
 山
 曹
 源
 院
 石
 水
 山
 西
 光
 寺
 深



 川



 弘




 宿に今晩の食事と泊りを予約し荷物を預けて出発、遠くから回ろうと思い30番へと向かう
 丹生では、「大和調子」「阿字観」献曲
 塩ノ沢では、「本手調子」「山谷」献曲、昼から本堂で葬式があり準備が始まる前にお参りできたのは幸運だった
 大石田では、「本手調子」「手向け」献曲
 深堀では、「大和調子」「虚空」献曲、川前に向かう橋の上で女性の歩き遍路とすれ違う、9月2日落裳での僧形の若い男性、そして今日の女性と歩き遍路を見かけたのは2人だった
 川前では、「三谷」献曲
 尾花沢では、夕方となり他の参拝客の姿も途絶え宿にも近いので、「大和調子」「本手調子」「阿字観」「虚空」「息観」と35分程献曲、読経も入れると小一時間のお参りとなった
 宿にて入浴・夕食後は明日に備え早寝とする
2008年9月17日(水)
尾花沢〜31 富沢〜番外 世照〜32 太郎田〜瀬見温泉「喜至楼」
 浪
 高
 山
 光
 清
 寺
 臥
 龍
 山
 天
 徳
 寺
 慈
 雲
 山
 明
 学
 院
 尾花沢BTから尾花沢町営バスに乗り、昨日歩いた30番観音入口の明徳小学校前バス停まで行く
 歩き出しすれ違う小学生にお早うと声掛けすると元気な返事が返ってくる、こちらも元気を貰ったようでズンズンと行程が捗る気がする、山刀伐峠は芭蕉の歩いた方向とは逆となり、芭蕉が見た風景を振り返り・振り返りしながら登る、また下り道では芭蕉が振り返り見たと思われる風景を楽しみながら歩く、腰を下ろすのに丁度良い石、芭蕉も腰を下ろして休んだのではと考えて思わず腰を下ろしてしまった、でも・・・良い句は浮かばない
 富沢では、「本手調子」「山谷」献曲
 世照では、「本手調子」「山谷」献曲、納経所で最上町内の蕎麦屋を教えて頂き昼食とする
 太郎田では、「大和調子」「虚空」献曲
 瀬見温泉に着く頃はすっかり暗くなっていた
2008年9月18日(木)
瀬見温泉〜33 庭月〜真室川〜山形〜仙台
 庭
 月
 山
 月
 蔵
 院
 今日を最終日とするべく、亀割り峠を足早に抜け鳥越を通り新庄へと出る
 新庄駅前交番で道を聞くと、33番への道の近くには瑞雲院があり境内に新庄藩主戸沢家の霊廟があると言う、少し寄り道をして六棟ある霊廟前の石畳を「回向」「手向け」歩き献曲する
 庭月では、「息観」「山谷」献曲
 真室川で知人宅仏間にて「手向け」献曲して最上三十三観音歩き巡礼の結願御礼とをする
 真室川駅の改札口に着いた時刻が丁度帰り電車の発車時間、目の前を電車が動いて行った、次の電車まで1時間以上ある、それを幸として駅待合室で結願祝いの缶ビールを飲む
 新庄・北山形・仙台と乗換え自宅に着き、仏間で無事結願の報告をしてから、家内と結願祝いの酒を飲んだのは10時過ぎであった。